超音波医学
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原著
乳房超音波における多発小嚢胞像の検討
宇佐見 陽子角田 博子梶浦 由香河内 伸江菊池 真理本田 聡齋田 幸久鈴木 高祐
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2011 年 38 巻 4 号 p. 455-460

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抄録

目的:乳房超音波において“多発小嚢胞像”は,乳腺内に多数の小嚢胞が局在あるいは区域性に集簇して見られるもの,と定義されている.多くが乳腺症と考えられるが,本邦においてその実態を示した報告はない.多発小嚢胞像の頻度を調べ,その病態・US所見について検討し,多発小嚢胞像の実態を明らかにすることを目的とした.対象と方法:2005年1月‐2009年1月に施行された乳房US(総数6,504例)のうち,チャートレヴューにて多発小嚢胞像を有した30例を対象.悪性の頻度,病理組織学的内訳,US所見,年齢について検証した.結果:多発小嚢胞像を示したのは,6,504例中30例,0.46%.多発小嚢胞像を示した30例中,8例,0.12%が病理組織学的に悪性と診断された(浸潤癌3例,非浸潤性乳管癌5例).残り22症例は臨床的あるいは病理学的に良性と診断された.US所見を,嚢胞の集簇のみの症例と,集簇する嚢胞の周囲に低エコーを伴う症例とに分類すると,前者は6例,後者は24例であった.悪性8例は全て集簇する嚢胞に合併して低エコーを伴っていた.一方,嚢胞近傍に低エコー域を認めない6例において悪性はなかった.悪性群と良性群の年齢を50歳を境に検討したが,両者に有意差はなかった(P=0.15).結論:多発小嚢胞像を示すものの中には頻度は低いものの乳癌も含まれており,単純性嚢胞とは区別して考える必要があることが示された.

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© 2011 一般社団法人 日本超音波医学会
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