超音波医学
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症例報告
空腸虚血を来たした孤立性上腸間膜動脈解離の1例
渡邉 学塩澤 一恵金山 政洋向津 隆規八鍬 恒芳丸山 憲一本田 善子島田 長人住野 泰清
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2011 年 38 巻 4 号 p. 473-480

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抄録

65歳,男性.前日ゴルフのラウンド中に上腹部痛が出現し入院となった.腹部超音波検査(US)にてintimal flapの描出は認めなかったが上腸間膜動脈(SMA)近位部の軽度拡張とカラードプラ法にて背側の順行性シグナルと反転するように腹側の逆行性シグナルを確認した.腹部multi-detector-row computed tomography(MDCT)でSMA根部の解離と限局性空腸壁肥厚を認めたため虚血性空腸を合併した孤立性上腸間膜動脈解離(ISMAD)と診断し抗凝固剤を開始した.SMA解離部及び虚血空腸についてUSとMDCTにて血流動態を追跡観察した.SMA解離は根部より約2 cm末梢側まで真腔・偽腔ともに血流を有していたが,偽腔拡張による真腔の狭小化をUSにて経時的に確認した.一方,MDCTや造影超音波(CEUS)で染影が低下していた空腸壁肥厚部の一部は,第19病日のCEUSにて血流の改善を認めた.その後,腹痛はなく第26病日より食事を開始したが,第38病日に食後の左側腹部痛が出現した.小腸造影で空腸に狭窄部位を認めたため,第59病日に開腹術を施行した.Treitz靭帯から20 cm肛門側の部位から約30 cmの範囲で空腸の狭窄を認めたため切除した.病理組織学的検査にて虚血に伴う遅延性狭窄と診断した.本症例では,保存的治療中のSMAの解離状態や腸管viabilityの判定にUSはきわめて有用であった.

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© 2011 一般社団法人 日本超音波医学会
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