超音波医学
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症例報告
胎児胸腔‐羊水腔シャント術を施行し良好な経過をたどった胎児肺分画症の1例
小松 玲奈中田 雅彦住江 正大早田 桂関野 和岡田 朋美石田 理野間 純吉田 信隆秋山 卓士
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2011 年 38 巻 4 号 p. 481-487

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抄録

胎児胸水を伴う肺分画症の予後は不良である.胎児胸水除去及びシャント術を行うことで,胎児水腫や肺低形成が予防でき,予後の改善につながると言われている.胎児胸腔‐羊水腔シャント術が有効であった胎児肺分画症の1例を経験したので報告する.症例は,34歳,経産婦.前医で胎児胸部腫瘤と心臓右方偏位を認め,妊娠28週6日に当科を紹介初診した.胎児超音波検査・MRI検査で左胸郭に43×46×41mmの腫瘤と多量の胸水を認めた.腫瘤は肺葉外に存在し,腹部大動脈から腫瘤へ向かう栄養血管を同定し肺葉外肺分画症と診断した.その他胎児構造異常や胎児水腫を認めず,ウィルス感染は否定的であった.同日胎児胸水を32 ml除去したが,翌日には胸水の再貯留を認めたため,妊娠29週1日に胎児胸腔‐羊水腔シャント術を施行(超音波ガイド下に八光社製ダブルバスケットカテーテルを留置)した.術後両肺は拡張し,胸水の再貯留・分画症肺の増大・羊水過多や切迫早産徴候なく経過した.妊娠38週5日,分娩誘発にて3,110 gの女児をAS9/9で経腟分娩した.児はNICUに入院,人工呼吸管理は不要であったが,日齢1より胸水が貯留し胸腔持続ドレナージを開始,150‐200 ml/日の排液を認めた.日齢8に分画肺摘出術を施行し,経過良好で日齢17に退院した.本症例は無治療であれば胎児水腫などを合併し予後不良であったと予想され,胎児胸腔‐羊水腔シャント術が有用であった.

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© 2011 一般社団法人 日本超音波医学会
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