超音波医学
Online ISSN : 1881-9311
Print ISSN : 1346-1176
ISSN-L : 1346-1176
原著
心エコー図法による左室弛緩能と充満圧の評価の限界:多施設共同研究SMAPからの中間報告
山田 聡岩野 弘幸大手 信之瀬尾 由広山田 博胤石津 智子楠瀬 賢也若見 和明三神 大世筒井 裕之
著者情報
ジャーナル 認証あり

2012 年 39 巻 4 号 p. 449-456

詳細
抄録

目的:拡張早期僧帽弁輪運動速度(e´)は左室弛緩能の指標,左室流入血流拡張早期波高(E)のe´に対する比(E/e´)は左室充満圧の指標として普及している.しかし,最近,これらの指標の精度を疑問視する成績が幾つか報告されている.そこで,多施設共同研究SMAPを行い,拡張機能指標の診断精度を再検討した.対象と方法:4施設からの52例において,micromanometer付きカテーテルを用いて左室圧を記録し,圧下降脚の時定数(τ)と平均拡張期圧(LVMDP)を計測した.心エコー図法による左室拡張機能指標を計測した.結果と考察:e´は弛緩障害の有無で有意差を認めなかった.τ(48±11 msec)とe´(r=-0.30, p=0.03),τと肺静脈血流の拡張期波減速時間(r=0.40, p=0.02)の間にはまばらだが有意な相関を認めた.E/e´は充満圧上昇の有無で有意差を認めなかった.LVMDP(8.3±6.1 mmHg)はE/A(r=0.47, p=0.001)とは相関したが,E/e´(r=0.27, p=0.053)とは相関しなかった.結論:本邦初の多施設共同研究により,種々の器質的心疾患を含んだ対象における左室弛緩能と充満圧の推定に関して,e´とE/e´には限界があることが示唆された.さらに,e´とE/e´には,基本的な拡張機能指標である左室流入血流や肺静脈血流の指標と比較して,優位性を認めなかった.

著者関連情報
© 2012 一般社団法人 日本超音波医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top