抄録
肝臓の血流は,動脈と門脈で供給され肝静脈へと流出する.栄養に富む門脈血は消化管を経た静脈系低圧血流であり,肝病変の影響で容易に動態は変化し,進行した慢性肝疾患では肝流入困難となって門脈圧亢進症へとつながる.動脈は本来,胆道系の栄養を受け持つが,こちらも病態によって変化し,門脈血と相補的な動態をとるとされている.筆者らはこれら肝栄養血流の動態を造影超音波(arrival-time parametric imaginging, perfusion parametric imaginging, arterialization ratioなど)で解析し,肝疾患の病態理解に役立てているので紹介する.まず,慢性肝疾患であるが,病変の進展とともに実質灌流血が門脈主体から動脈主体へと変化する(実質灌流の動脈化).これを利用し,線維化ステージ診断,門亢症発現,門脈側副血行路発達,hyperdynamic circulationなどの推測が可能である.急性肝障害では門脈血流減少なしの動脈化がみられる.炎症回復とともに門脈血由来の灌流が戻るが,戻りが悪いと予後が悪い.アルコール性肝障害では,動脈化が他疾患より高度で,飲酒により増悪する.飲酒チェッカーとしても応用可能である.以上のごとく,栄養血流の動態把握は疾患の診断だけでなく,病態理解の大きな助けとなることを強調したい.