2016 年 43 巻 4 号 p. 577-580
Calcified amorphous tumor(CAT)は,石灰化を伴う極めて稀な非増殖性の腫瘤である.今回,僧帽弁輪部に心臓CATを発症した末期腎不全の1例を経験した.冠動脈インターベンションの既往がある70歳の女性が,冠動脈の再評価のために来院した.心エコー図検査では僧帽弁後尖の弁輪部に僧帽弁輪石灰化(mitral annular calcification: MAC)が存在し,可動性に富んだエコー輝度の高い直径10 mmの腫瘤が付着していた.1年前および半年前に施行された心エコー図検査の記録を確認したところ,MAC内部のエコー輝度が低下した乾酪様僧帽弁輪石灰化(caseous calcification of the mitral annulus: CCMA)が疑われたが,可動性の腫瘤はなかった.今回の心エコー図検査では,CCMAの外側が一部崩壊し,可動性腫瘤として左室内部に突出しているように観察された.塞栓症のリスクが高いため外科的に摘出し,最終的にCATと病理診断された.本例における心エコー図の経時的な変化は,CATが発生する一つの過程を示唆している可能性がある.