超音波医学
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総説
心エコー図による左室拡張能の評価
大門 雅夫川田 貴之中尾 倫子木村 公一宇野 漢成
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2016 年 43 巻 4 号 p. 549-555

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抄録
近年,社会の高齢化に伴い左室駆出率の保たれた心不全(heart failure with preserved left ventricular ejection fraction: HFpEF)が増加している.HFpEFの病態において中心となるのは左室拡張不全であり,HFpEFを正しく診断をして適切な治療方針へ導くためには,左室拡張能の評価が不可欠である.心エコー図は左室拡張能評価に有用であり,臨床において非侵襲的で繰り返し施行可能である.左室拡張能は,左室流入パルスドプラ波形のE波とA波の比により,正常型および弛緩障害型,偽正常型,拘束型に分類される.僧帽弁輪部の組織ドプラ波形拡張早期波e′は左室弛緩能と相関し,正常型と偽正常型あるいは拘束型の分別に有用である.また,肺静脈血流や左房容積も左室拡張能評価に有用である.一方で,心エコーによるこれらの拡張能指標にはそれぞれ限界があるため,左室拡張能は単独の指標ではなく複数の指標を用いて包括的に判断する必要がある.さらに,左室拡張能は,健常人においても加齢に伴い低下する.そのため,左室拡張能の異常については,被検者の年齢も考慮して判断する必要がある.本論文では,心エコー図を用いた左室拡張能評価の基本について概説する.
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© 2016 一般社団法人 日本超音波医学会
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