超音波医学
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症例報告
両大血管起始部の著明な拡張と胸部下行大動脈の蛇行を認めた胎児Loeys-Dietz症候群の1例
井上 茂藏本 昭孝猪俣 慶稲村 真世藤 真理子黒川 裕介大田 俊一郎吉里 俊幸八浪 浩一石松 順嗣
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2017 年 44 巻 3 号 p. 295-299

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抄録

胎児Loeys-Dietz症候群と臨床的に診断した症例を経験したので報告する.33歳の初妊初産婦.特記すべき既往歴,家族歴はなかった.妊娠26週1日に大動脈の弁直上の著明な拡張と弁逆流,上行・下行大動脈の拡張と下行大動脈の蛇行所見,肺動脈弁直上の著明な拡張と弁逆流を認めた.心嚢液貯留,全身の皮下浮腫,腹水貯留が出現し,妊娠31週3日に帝王切開分娩となった.胎児期には重症な動脈弁逆流と大動脈逆流を合併した胎児心不全と診断したが,Marfan類縁疾患との明確な診断には至らなかった.出生時体重2,262 g (+3.11 S.D)の男児,身長は45.0 cm(+1.91 S.D.),Apgar scoreは1分値が1点,5分値3点であった.クモ状指,口蓋裂,二分口蓋垂や関節拘縮は認めず,心臓超音波検査では出生前と同様の所見を認めた.心不全状態の進行により21生日に死亡した.染色体検査では正常核型であった.遺伝子検査については両親の同意が得られなかった.本症例のように胎児期より両大血管起始部の拡張所見を認めるような症例では結合組織の脆弱性に起因する疾患である新生児Marfan症候群に加えてLoeys-Dietz症候群を念頭において周産期管理を行う必要がある.胎児発症のLoeys-Dietz症候群は非常に予後の悪いことが予想され,出生前から遺伝子診断を勧めることで出生後の予後説明が可能となる.

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© 2017 公益社団法人 日本超音波医学会
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