超音波医学
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症例報告
胎児心循環機能のモニタリングによる周産期管理を実施した高拍出性心不全を呈した胎児巨大肝血管腫の1例
林 彩世小澤 克典室本 仁杉林 里佳小杉 洋平柴田 優花池ノ上 学和田 誠司伊藤 裕司左合 治彦
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2021 年 48 巻 3 号 p. 133-137

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抄録

胎児巨大肝血管腫は動静脈シャントによって高拍出性心不全を呈し,胎盤循環も悪化する.そのため胎盤循環を含めた胎児循環の評価を行い適切な娩出時期を決定する必要があるが,いまだ確立した評価方法がない.臍静脈血流量(UVFV)の総心拍出量(CCO)における割合(UVFV/CCO)は胎盤循環の指標となることが報告されており,この指標を含めた心循環機能評価を行うことで早期に病状の変化をとらえた胎児巨大肝血管腫の症例を報告する.妊娠27週に心胸郭断面積比(CTAR)48.5%の心拡大と軽度の僧帽弁・三尖弁逆流を認めた.CCO 1,214 ml/min,UVFV 350 ml/minと増加を認めたが,UVFV/CCOは28.9%と保たれ,羊水量は正常で胎児水腫を認めなかった.しかし,妊娠30週1日にCTAR 62.9%と増悪,CCO 1,620 ml/min,UVFV 236 ml/minとなり,UVFV/CCOは14.6%に低下した.胎児水腫は認めなかったが羊水過少となり,Biophysical profiling score 2/10点と低値であった.妊娠30週4日に胎児心拍数陣痛図において基線細変動の減少が出現し,胎児機能不全と診断,緊急帝王切開術を施行した.児は2,340 g,Apgar score1点(1分値),5点(5分値),臍帯動脈血pH 7.254で出生した.日齢1.5に肝血管腫に対してコイル塞栓術を行ったが原病のコントロールがつかず,グラム陽性球菌による敗血症で日齢70に永眠した.UVFV/CCOの減少が巨大肝血管腫による胎児胎盤循環の悪化を反映すると思われた.

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