超音波医学
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症例報告
造影超音波検査に高周波プローブ併用が診断に有用であった小細胞肺癌のびまん性肝転移の1例
簑田 直樹多田 俊史松﨑 俊樹住ノ江 功夫綿貫 裕中村 進一郎
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2021 年 48 巻 5 号 p. 281-286

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抄録

症例は70歳代女性,前医より急性肝炎もしくは急性胆管炎,そして肺門部腫瘤が疑われ,精査加療目的に当院紹介となった.各種血液検査では軽度の貧血,肝胆道系酵素の上昇,炎症反応の軽度上昇が認められた.超音波検査(Bモード)では肝両葉は著明に腫大し,肝表面に近い肝臓実質内に厚みのある辺縁低エコー帯を伴う低~等エコー腫瘤が散在していた.造影超音波検査(後血管相)のコンベックスプローブの観察では,肝臓内に最大8 mm大の欠損像が多数認められた.さらに造影超音波検査(後血管相)のリニアプローブの観察では,肝臓内に無数の微小な欠損像が認められた.腫瘍マーカーはNSE: 562.0 ng/mL,ProGRP: 36,325.4 pg/mLで高値であった.気管支鏡検査による縦隔リンパ節の細胞診の所見は小細胞肺癌のリンパ節転移であった.造影超音波検査(後血管相)においてリニアプローブを使用することで,肝臓内にコンベックスプローブでは不明瞭であった無数の微小な欠損像を指摘でき,腫瘍マーカーと合わせて,小細胞肺癌のびまん性肝転移と診断できた.原因不明の肝障害で,背景に悪性疾患が疑われ,Bモードで肝腫大や腫瘤性病変を指摘した場合,びまん性肝転移も鑑別に挙げる必要がある.そして検査者は臨床側に造影超音波検査での精査を進言することで,迅速な診断の一助になり得ると考えられた.

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© 2021 公益社団法人 日本超音波医学会
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