超音波医学
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救急初療時の経胸壁心エコー図検査により迅速診断された左房粘液腫とたこつぼ症候群の併発例
矢北 夢夏西野 峻西野 千春矢野 光洋浅田 祐士郎有馬 美樹髙原 智幸柴田 剛徳
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ジャーナル 認証あり 早期公開

論文ID: JJMU.A.267

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抄録

急性冠症候群患者における救急初療時の経胸壁心エコー図検査は,診断および治療方針の決定に極めて重要な役割を果たす.当院では,心臓超音波検査士が24時間常駐しており,常時心エコー図検査が施行可能な体制を整えている.今回,我々はST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)が疑われ救急搬送された患者に対し,初療時の心エコー図所見が診断の決め手となり,左房粘液腫にたこつぼ症候群を合併した比較的稀な病態を的確に診断し得た症例を経験した.症例は50代女性.土曜夕方に自転車走行中,持続する胸痛を自覚し,休日当番医を受診した後,STEMI疑いで当院へ救急搬送された.救急外来における心エコー図検査にて,心房中隔に茎を有し可動性に富む辺縁整な多形性腫瘍を左房内に認め,左房粘液腫が強く疑われた.同時に,左室心尖部の高度壁運動低下と心基部の過収縮を認め,たこつぼ症候群または腫瘍塞栓による急性心筋梗塞が鑑別に挙げられた.緊急冠動脈造影では有意狭窄や閉塞は認められず,翌日に緊急腫瘍摘出術が施行され,病理診断にて左房粘液腫と確定された.後日施行したMRIおよび核医学検査により,最終的にたこつぼ症候群と診断された.本症例は,救急初療という限られた時間と体位制限下においても,経胸壁心エコー図検査により診断の決め手となる画像情報が得られ,迅速かつ適切な治療へと結びついた点で,非常に意義深い症例である.

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