抄録
妊産婦のレストレスレッグス症候群/Willis-Ekbom病(RLS/WED)の有病率は同じ地域・人種の非妊産婦と比較して2 −3倍と高率である。妊産婦のRLS/WEDの多くは妊娠中に発症し、出産とともに消失する。一部の患者では妊娠中、または授乳中に重症化し、QOLが損なわれることがある。しかし、妊産婦のRLS/WEDに対する治療に関する知見はいまだ十分に蓄積されたものではない。妊産婦のRLS/WEDの病態には遺伝的背景に加えてホルモン動態の変化、鉄欠乏、ビタミンD欠乏、および喫煙等の生活習慣に伴う因子が関わっている。RLS/WEDを合併する妊産婦では妊娠高血圧症候群の合併が多いとの報告もあり妊娠経過や分娩アウトカムへの影響が問題となる。妊娠中のRLS/WED、妊娠糖尿病(GDM)や妊娠高血圧症候群の既往は出産後の慢性のRLS/WED発症のリスクを高める。妊娠中からRLS/WEDに関する啓蒙を行い医療者側も適切に対応することが求められている。