抄録
日本では、警察統計によれば、自殺の動機として「病苦」および「経済・生活苦」がもっとも多い。動機によって必要な自殺対策は異なる可能性がある。これらの動機による自殺の予防の標的集団を明らかにするため、警察統計と人口動態統計を用い、大分県の「病苦」および「経済・生活苦」による自殺率を求めた。これらの値は2001〜2006年の間ほとんど一定であった。2006年の大分県における「病苦」による自殺率(人口10万あたり)は男13.8、女7.4で、高齢者特に男性80歳以上で高かった。全自殺に占める割合は、男70歳以上および女50歳以上で6割を超え、これらの集団を標的にした保健・医療・福祉面からの自殺対策が必要と考えられた。ただし併存する抑うつ症状や飲酒問題にも留意する必要があるだろう。2006年の大分県における「経済・生活苦」による自殺率は男12.7、女1.1で30〜69歳男性で高かった。全自殺に対する割合は30〜49歳の男性で5割を超えたことから、これら働き盛りの男性の経済的救済も含めたセーフティネットワークの構築が必要と考えられた。