日本腎臓病薬物療法学会誌
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短報
血液透析患者における銅欠乏リスクを考慮した酢酸亜鉛投与量の後ろ向き研究
橋本 湖澄古久保 拓吉田 拓弥三宅 瑞穂小田 智子藤田 千佳和泉 智庄司 繁市山川 智之
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2025 年 14 巻 2 号 p. 207-213

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抄録

透析患者は亜鉛欠乏に陥りやすい一方で、過剰な亜鉛補給による銅欠乏は貧血を含む血球減少の原因となる。今回、銅欠乏リスクの観点から、透析患者における適正な亜鉛投与量についての評価を行った。

亜鉛補給を目的に酢酸亜鉛水和物(ノベルジン®錠)を新規に開始し、血清亜鉛および血清銅濃度の評価が可能であった血液透析患者10名を対象とし、治療開始後の血清亜鉛濃度および血清銅濃度を最長1年間調査した。

酢酸亜鉛水和物の1日投与量は25 mgと50 mgが各5名であった。酢酸亜鉛水和物開始前後において血清亜鉛濃度は58[45 – 84]μg/dLから114 [46 – 155]μg/dLとなり、血清銅濃度は83[58 – 121]μg/dLから91[8 – 113]μg/dLとなった(N=10,中央値[最小値 – 最大値])。酢酸亜鉛の投与量別の評価では、血清亜鉛濃度は25 mg/日群で106.5[87.0 – 126.0]µg/dL,50 mg/日群で114.0[46.0 – 155.0]µg/dLとなった。酢酸亜鉛水和物開始1年以内に、25 mg/日群で1名、50 mg/日群で5名全例が投与を中止されていた。酢酸亜鉛開始後、血清銅濃度は25 mg/日群で103.0[91.0 – 113.0]µg/dL 、50 mg/日群で12.0[8.0 – 92.0]µg/dLとなり、血清銅濃度低下による投与の中止は、50 mg/日群で4名認めたが、25 mg/日群では認めなかった。50 mg/日群での血清銅濃度の低下は最短で投与開始から3カ月後に認められた。50 mg/日群のうち1名は、銅欠乏症と血球減少との関連が疑われたため9か月後に投与を中止され、その後改善した。

以上、銅欠乏リスクの観点から透析患者に対し酢酸亜鉛水和物を50 mg/日以上で開始する場合は、少なくとも3カ月以内での血清銅濃度のモニターを要すると考えられた。また、25 mg/日によっても亜鉛補充効果は得られたため、低用量からの開始は合理的であると考えられる。

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