魚類への食害など人間との軋轢が顕在化しているカワウPhalacrocorax carboの被害防除を目的とし,3年間にわたり山梨県下曽根コロニーにおいて擬卵置き換えによる繁殖抑制を行った.擬卵には鶏卵および石膏製のものを用いたが,置き換えを行ったすべての巣で親鳥が擬卵を抱卵した.置き換えを行った巣での一巣あたりの巣立ち雛数は,置き換えを行っていない巣よりもはるかに少なく,繁殖抑制効果が認められた.特に2006年はコロニー内のほとんどすべての巣で産み足し卵についても置き換えを行った結果,194巣からわずか12羽の雛しか巣立たなかった.営巣数が年々増加したものの,コロニー全体の巣立ち雛数は2004年をピークに減少したため,擬卵置き換えは雛数抑制に有効であることが示された.しかし,雛の加入が制限されているにもかかわらず,個体数の減少傾向はみられなかった.そのため,擬卵置き換えは,個体数抑制ではなく,雛数抑制による食害防除を短期的な目標として実施されるべきである.