2007 年 56 巻 1 号 p. 51-57
ヤマセミCeryle lugubrisの巣内育雛期間中の雛への給餌に対して釣り人の存在が与える影響を,2006年に千曲川中流域の2巣で調査した.うち1巣ではアユ釣りの解禁後に,もう1巣では解禁前に雛が巣立った.それぞれの巣の近くにビデオカメラを設置し,育雛の後半から巣立ち日までの親個体の給餌行動を記録した.アユ釣りの解禁後には巣の周辺の釣り人の位置と数も記録した.2つの巣での記録の比較から,アユ釣りの解禁後,釣り人の活動が盛んになると雛への給餌回数が減少する傾向が認められた.また,アユ釣りの解禁後は解禁前よりも巣に搬入された魚が小型化する傾向が見られた.以上の結果は,巣の近くの釣り人の存在がヤマセミの給餌行動を阻害することを示唆するものである.