日本鳥学会誌
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短報
ノヤギ駆除後における小笠原諸島聟島の鳥類相
栄村 奈緒子出口 智広
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2009 年 58 巻 1 号 p. 77-85

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抄録

聟島は小笠原諸島の北部に位置する無人島である.この島の植生は第二次大戦後に野生化したヤギ(以下ノヤギ)によって植生の大部分が破壊された.同時に鳥類相も戦後にかけて変化が見られ,戦前生息していた小笠原の固有亜種ハシナガウグイスCettia diphone diphoneと,固有種メグロの亜種ムコジマメグロApalopteron familiare familiareが確認されなくなった.ノヤギが近年すべて駆除されたことから,島の植生は回復しつつある.今回,聟島の陸鳥の鳥類相の現状を明らかにするため,2007年3月から6月の期間,島内の2ヵ所でルートセンサスを行い,さらにルート区間の植生を記録した.結果,外来種メジロが多くの森林で,在来種イソヒヨドリがわずかに開放地で観察された.調査期間中観察され,繁殖が確認されたのはこの2種のみであった.その他の小笠原在来陸鳥のノスリButeo buteo,ヒヨドリHypsipetes amaurotis,トラツグミZoothera dauma,ウグイスCettia diphoneは一時的に少数が観察された.今後これらの鳥類の飛来,定着が聟島の植生が回復するにつれて増加するかもしれない.外来種メジロは小笠原在来鳥類との間で餌資源の競合が生じる一方で,種子散布者,花粉媒介者として島の植生回復に貢献すると考えられる.

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© 2009 日本鳥学会
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