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日本鳥学会誌
Vol. 59 (2010) No. 1 P 20-30

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http://doi.org/10.3838/jjo.59.20

総説

野外における海鳥の潜水の多くは,酸素呼吸潜水限界時間(酸素保有量を潜水中の酸素消費速度で割った値)より長い.その理由のひとつとして,水中を潜降するときに,海鳥は深度とともに低下する浮力に釣り合うようにうまくストロークを調節し,酸素消費速度を下げている可能性がある.深度による足こぎと羽ばたき周波数の変化を,ミナミジョージアミナジロヒメウ Notocarbo georgianus,ウミガラス Uria aalge,マカロニペンギン Eudyptes chrysolophus でバイオロギング技術を使って比較した.1回の足こぎで1回前進するミナミジョージアムナジロヒメウでは,60mまで沈降する間に推進および足こぎ周波数が低下した.ウミガラスにおいても,推進周波数は沈降中に低下したが,羽ばたき周波数はほぼ一定だった.これは,ウミガラスが浅い場合は翼のうち下げ打ち上げそれぞれで前進したが,それより深い場合は打ち下げでのみ前進したためである.いっぽう,マカロニペンギンの場合は,いずれの深度でも打ち上げ打ち下げそれぞれで推進し,羽ばたき周波数はほぼ一定だった.潜降時のマカロニペンギンの体軸角度は,ミナミジョージアムナジロヒメウやウミガラスに比べ浅かったため,浮力につりあわせるための推力は相対的に小さくて済むので深度にあわせて推進周波数を変化させる必要がないのかもしれない.潜降中の遊泳速度はミナミジョージアムナジロヒメウ,ウミガラス,マカロニペンギンとも1.4–2.2m/sとほぼ一定であった.3種とも浮力変化に合わせて,遊泳速度を一定に保つようにストロークを調節しているようであった.このように,バイオロギング技術は,野外で自由に生活する鳥類が形態や物理力の制約のもとでどのように運動調節しているかを明らかにする.この技術は空中と水中を飛行する鳥類の行動生態学において新しいアプローチを可能にする.

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