日本鳥学会誌
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総説
鳥類モニタリングデータの使い方と集め方を考える:カウントデータの誤差とつきあう技術
藤田 剛
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2011 年 60 巻 1 号 p. 3-11

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抄録

さまざまな鳥類モニタリングデータの中で,カウントデータはもっとも良くみられるものであり,対象とする鳥類や同じ生息地の他の生物の保全活動に重要な役割を果たしてきた.しかし,カウントデータには,たとえば同じ環境要因が実際の鳥の個体数に影響すると同時に個体の発見率にも影響するといった誤差が含まれていることが多い.ここでは,不確定要素の影響を推定する技術として,修正リッカー式を用いた数値実験と混合モデルをもちいた解析例を紹介した.これらの方法によって,カウントデータに含まれる観察誤差とプロセス誤差,それぞれの影響の大きさを推定することで個体数増減評価上注意すべき点を明らかにしたり,発見率の場所によるばらつきを考慮した上で増加率や生息密度の高い場所を推定したりすることが可能になる.日本には,30年以上にわたる広域モニタリングによって蓄積された鳥類のカウントデータがある.ここに挙げた方法などをもちいることによって鳥類カウントデータ解析がさらに進むことは,日本の鳥類をはじめとする生物多様性の保全に重要な役割を果たすものと考えられる.

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© 2011 日本鳥学会
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