抄録
本実験では走査型電子顕微鏡(SEM)と光学顕微鏡により,ハシブトガラスCorvus macrorhynchosの味孔と味蕾の分布および形態学的特徴について研究を行った.口腔表面に2種類の開口部が認められた.大型の開口部は渦状または紡錘状で,孔の直径は50 μm以上であった.一方,小型の開口部は円形で,その孔の直径は10 μm以下であった.光学顕微鏡観察で認められた唾液腺導管の開口部と味孔の直径は,ほぼSEMにより観察された大小2種類の開口の大きさにそれぞれとほぼ一致するものであった.さらに,大小の開口部の位置関係から,大型の開口部は唾液腺の導管開口部に相当し,小型のそれは味孔と判断された.また,口腔表面では平均537(SE=38.4, N=4)個の味孔が観察され,上顎部に18.5%,下顎部に81.5%の割合で存在し,舌表面では味孔も味蕾も観察されなかった.また,味蕾は明調,暗調および支持細胞の3種類の味細胞によって構成されていることが分かった.