日本鳥学会誌
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シロハラミズナギドリ類の腸の捻転とミズナギドリ目の消化管
黒田 長久
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1986 年 35 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

シロハラミズナギドリPterodromaには腸の上半部が手拭を絞ったように捻れているものがあり,下半部は細く複雑な回転をなす.これは,少量の食物をなるべく長く腸に保ち,長時間栄養摂取できる適応と思われ,台風などで体力が消耗したものでは,捻れが伸びて手拭の絞りをゆるめた状態になる.
この類は,昼間採餌性で餌群に群れ飽食性のミズナギドリ類と小型のためプランクトンなどの餌を分散して常時少量採餌するウミツバメ類との中間にあって,単独性で夜間ハダカイワシや発光イカなどを探し捕食する探索採餌性への適応として,腸の捻れが発達したと考えられる.
なお,比較腸長(腸長/翼長)は,溜餌する大型種ほど大,少量の餌を短時更新する小型種ほど小,また,餌密度の高い高緯度寒流域に分布する種(越冬•越夏も含め)ほど大,餌密度の一般に低い熱帯留鳥性の種で小,という結果を得た.シロハラミズナギドリは熱帯海域性であり,少量の餌をなるべく長く腸に留め,荒天時の絶食にも耐える適応としても腸の捻転が役立つものと思われる.腸の回転型,捻転部や前胃壁(食性との関連として)の組織学的所見なども加えた.

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