日本鳥学会誌
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エゾライチョウ Tetrastes bonasia の生態および人工繁殖に関する研究
2.北海道東部における冬季の行動圏,日周活動および就塒行動
芳賀 良一横田 寿男鷹股 修一
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1987 年 35 巻 4 号 p. 145-154

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抄録

1) エゾライチョウの冬季の行動圏,日周活動および就塒行動を,1984年2月から同年5月まで,標茶にある京都大学農学部付属演習林内のカラマツ人工林と飼育下で観察した.
2) 冬季の調査地のカラマツ人工林では,付近や行動圏内にシラカンバが混生していなければ,エゾライチョウは観察されなかった.
3) 行動圏を持った番いを観察した結果では,6-8時では木から木へ飛び移りながら広い範囲で採食を行なったが,日中は積雪上をゆっくり歩行しながら,雪の上に出ている植物(とくにイヌコリヤナギやイタヤカエデの冬芽)を啄んでいた.厳冬期間中,夜は雪洞内にねぐらをとった.
4) 飼育下での観察では,9月以降に番い形成の行動が認められた.
5) 調査地内には2月下旬-3月上旬に3行動圏が確認された.そのうち,行動圏Aでは番いと他の雄1羽が観察され,この行動圏の面積は約11.5haと算出された.行動圏BとCではそれぞれ雄と雌が1羽ずつ観察されただけで,その面積は約1.3haと約2.5haであった.3月下旬には,行動圏Aは約7.8haに縮小し,一方行動圏Bは約5.3haに拡大した.行動圏Cの雌はいなくなった.
6) 飼育下での日週活動は,層自然状態の場合とほぼ同じであった.

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