日本鳥学会誌
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セッカの雌親による繁殖期後期の卵およびひなの遺棄について
上田 惠介
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1987 年 36 巻 1 号 p. 13-17

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抄録

一夫多妻の鳥セッカでは,繁殖ステージの後期に雌親による卵やひなのいる巣の遺棄がしばしば起こった.
1) セッカの雄親は抱卵•育雛をまったく手伝わないので,遺棄された卵やヒナはすべて死亡した.
2)雌親の遺棄による死亡率は抱卵に入った卵の9.3%,ひなの15.2%に及んだ.
3)遺棄の起こる時期に強い季節性が見られた.8月以降に抱卵に入った30巣の内,12巣(40.0%)が遺棄されたのに対し,それ以前の160巣ではわずか3巣(1.9%)しか遺棄されなかった.
4)遺棄の原因は,おそらく換羽や渡りの遅れに対する雌親の生理的反応であろうが,充分成長した卵やひなを遺棄することは雌にとって大きな損失になると思われる.

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