1991 年 39 巻 3 号 p. 83-92
場所間の選択性の違いが,2皿選択実験に対してどのように影響するかを明らかにするため,モンテカルロ法によって2皿実験をシミュレートした.
1) 2か所の餌場に同じ餌を置き,場所間の選択性を調べる対照実験では,餌場訪問頻度(FV)と,1回の訪問当りの採食量(FTA)の変化に比較的敏感に反応して,場所間の選択性に差が現れた.
2) 処理実験では,処理餌の忌避係数(CR)の値により,処理餌の効果を検出できる割合が決定された.CRが大きいほど検出は容易で,また餌場訪問のたびにCRの値が増加する場合には,さらに処理の効果の検出は容易となった.
3) FV,FTA,CRなどのパラメータの推定は,鳥の行動の記録と餌重量の計測によって可能であることを示唆した.また,実際の実験でのFV,FTAの推定から2皿選択実験では,もし場所間の選択性の差が常にみられるのでなければ,場所間の差で修正する必要もなく,十分に処理の効果を検出できることを示唆した.