日本鳥学会誌
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ホンセイインコ類によるセンジュギクの食害
P. S. SANDHUJaswinder S. SANDHU
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1994 年 43 巻 2 号 p. 73-78,105

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抄録

メキシコ原産のセンジュギク Tagetes erecta はインドで最も一般的な庭園の花であり,花は商品として,また花から抽出した油は香料や医薬として用いられている.商品用の花を出荷してから種子の収穫まで約6ヶ月あるが,この期間にホンセイインコ類が種子を食べるために花に大きな被害を与えている.この論文の目的はインコ類の食害の実態を明らかにすることである.センジュギクは4×12mのプロットをそれぞれ8プロットと7プロットづつ並列して植えられた(Fig. 1).インコ類の食害は種子の収穫直前に調査した,各プロットを内と外の半分に分け,それぞれから3本のセンジュギクをランダムに選び,食害させずに残った花の数とインコ類にむしりとられた花の数を記録した.また,食害を受けた植物からインコ類が種子を食べるための止まり木として利用したシッソノキ,道路までのそれぞれの距離を測定し,周囲の交通量を朝から夕方まで毎時間測定した.
センジュギクを食害するインコ類は,コセイインコ Psittacula cyanocephala とホンセイインコ P. krameri の2種で,前者は20-30羽の群を形成して飛来したが,後者は3-5羽で時々飛来したに過ぎなかった.全食害率は64.7%に達し,止まり木になるシッソノキ側は道路側より有意な被害を受けたが,トマト畑側と小道側の食害の間には差がなかった(Table 1).シッソノキ側の食害が最も多く,道路側の食害が最も少なかった(Table 2).食害はシッソノキに近ければ,近いほど大きくなり(Fig. 2),シッソノキから食害された植物までの距離と食害率の間には統計的に有意な負の相関があり,道路から植物までの距離と食害率の間には有意な正の相関があった.この正の相関は鳥が人間の干渉を避けて採食していることを示唆している.食害率は道路からの距離に直接的に関係している(Fig. 3).交通量は,道路で多く小道との間には有意に差があり,モーター使用車の交通量も道路で高く,小道との間には有意な差があった.
この研究でインコ類はセンジュギクの種子をランダムに採食しているのではなく,止まり木に近い花を選択的に採食していることが明らかになった.このことは止まり木と花の間の行き来に要する時間,故にエネルギーを節約する助けになっている.また,インコ類は人間の干渉を避けて採食していることも明らかになった.この点は道路側の食害率が小道側の食害率よりも有意に低いことから明らかである.センジュギクの主な食害鳥はコセインインコであり,ホンセイインコの食害は少ない.これはホンセイインコがコセイインコより体も嘴も大きく,センジュギクの小さな種子を採食するのが困難なことに起因しているのだろう.センジュギクの種子の収穫量はヘクタール当たり300-375kgであり,1kgが800-1000ルピーで売買されている.したがって,インコ類はヘクタール当たり155000-243000ルピーの被害を与えていて,食害を防ぐ手段を開発する必要がある.

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