1997 年 46 巻 2 号 p. 133-135
1997年2月,北海道千歳市で鉛中毒で死亡したオオハクチョウ Cygnus cygnus の腹気嚢から Cyclocoelidae 科吸虫が発見された.形態学的検討により,Hyptiasmus sp. と同定された,本邦の野生 Cygnus 属から Hyptiasmus 属を含む Cyclocoelidae 科吸虫が発見されたことは今回が初めてであった.また, Cygrzus 属から Hypfiasmas 属が発見された報告はニュージーランド産コクチョウ Cygnus atratus のものに次ぐ,第2番目となった.吸虫の被嚢幼虫メタセルカリアを体内に宿した淡水産あるいは陸産巻貝を,鳥類が餌植物と一緒に経口的に取り込むことにより感染が成立することから,今回の感染が本邦で起きた可能性も示唆された.少数寄生では宿主に与える影響は小さいと考えられるが,メタセルカリアの検出を含めた疫学的調査が望まれた.