日本鳥学会誌
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サンコウチョウの繁殖生態
水田 拓
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1998 年 47 巻 1 号 p. 25-28

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抄録

サンコウチョウの繁殖生態について,1992年4月から7月にかけて静岡県の掛川市,袋井市で調査を行なった.繁殖をしているサンコウチョウの雄には,羽色が黒紫色で尾羽の長い成鳥の個体と,羽色が雌とよく似た赤茶色で尾羽の短い若い個体が見られた。調査地ではまず尾の長い雄が見られ,それに約1ヵ月遅れて尾の短い雄が確認された.従って繁殖開始時期は尾の長い雄のつがいの方が尾の短い雄のつがいよりも早かった.巣は全部で12巣発見されたが,そのうち6巣は広葉樹にまきつくツル性植物に,3巣は広葉樹に,3巣は針葉樹に造られていた,造巣,抱卵,雛への給餌は雌雄交代で行なわれた.巣での滞在時間は雄より雌の方が長かった.育雛前期には給餌,見張り,抱雛という3種類の行動が観察された.雄は抱雛より見張りを,雌は逆に見張りより抱雛を多く行なった.育雛前期,後期とも雌は雄より給餌回数が多い傾向にあった,しかし、若い雄の雌によく似た色彩、形態がどのような適応的意義をもつのかは今回の調査からは明らかにはできなかった.

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