日本鳥学会誌
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日本南部の島々におけるメジロ Zosterops japonica の盗蜜行動の広がり
上田 恵介
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1999 年 47 巻 3 号 p. 79-86

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抄録

小笠原におけるこれまでの研究で,著者はメジロ Zosterops. japonica がアオイ科のハイビスカス Hibiscus cvs. とウナヅキヒメフヨウ Malvabiscus arboreus var. penduliflorus, そしてベンケイソウ科 Crassulaceae のセイロンベンケイ Bryophyllum pinnatum (Lam.)Kurzの花から盗蜜を行っていることを発見した.そこで日本の他地域のメジロ個体群が,同様の行動を示しているかどうかを見るために,小笠原同様にハイビスカスが植栽されている日本南部の島々および台湾で,メジロの盗蜜行動の有無を調べた.
1)1991~1998年の8年間に伊豆•小笠原諸島と屋久島から奄美•沖縄諸島および台湾にかけて,計21の島の合計49地点で植栽されているハイビスカス(花数にして6413花)の盗蜜痕を調べた.
2)調査地域北部の伊豆大島,三宅島,八丈島,屋久島,トカラ列島といった北緯29.以北の島々では,盗蜜痕はまったく発見できなかった.
3)奄美大島,徳之島,与論島,沖縄島,台湾では盗蜜による花の被害率は高く,徳之島では8割近い花が,また台湾でも7割近い花がメジロによる盗蜜を受けていた.
4)調査した花のうちメジロの盗蜜を受けていた花は全体では30.4%で,ハイビスカスへの盗蜜痕が見つかっていない島々を除くとメジロが盗蜜行動を示している島々では,ほぼ半数近くの花が被害を受けていることがわかった.
5)大東諸島の南大東島,八重山諸島の石垣島,西表島では盗蜜の痕はほとんどなく(西表島での不確実な1花のみ),宮古諸島でも非常に少なかった(3島の平均は4.7%).
6)春の調査で盗蜜痕が発見された沖縄島では,夏~秋の調査では盗蜜痕が見つからなかった.
7)セイロンベンケイについては小笠原諸島以外ではまったく盗蜜痕はみられなかった.
8)メジロの地域個体群(亜種)との関連では,シチトウメジロとシマメジロ,ダイトウメジロは盗蜜行動を示さず,リュウキュウメジロとヒメメジロ,そして小笠原諸島の個体群のみが盗蜜行動を行っていることがわかった.
9)奄美から台湾にかけて分布するリュウキュウメジロとヒメメジロ個体群と小笠原のメジロ個体群の間に個体の交流があるとは考えられず,盗蜜行動はそれぞれの地域個体群で,固有に発現して.いる行動と考えられる.

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