日本鳥学会誌
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移入鳥類の帰化
江口 和洋天野 一葉
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1999 年 47 巻 3 号 p. 97-114

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抄録

日本への鳥類の移入定着の成功を決定する要因と帰化個体群の在来鳥類群集に与える影響について,ニュージーランド,ハワイ諸島,マスカレーニュ諸島での鳥類移入の資料を基に考察した.日本への鳥類の移入では狩猟目的のキジ目,ペット目的のオウム目,スズメ目(カエデチョウ科,ハタオリドリ科)が大半を占ある.狩猟目的の組織的な放鳥のあったコウライキジ,コジュケイを除いて,ほとんどが事故ないし意図的な逸出である.帰化個体群を定着させたと考えられる種はコウライキジ,コジュケイ,ドバト,ワカケホンセイインコ,カオグロガビチョウ,ガビチョウ,ソウシチョウ,ベニスズメ,ハッカチョウ,カササギである.定着成功種は食性の幅が広く,開けた環境を好む.例外的に,ガビチョウとソウシチョウは近年落葉広葉樹林内で個体数を急激に増加させている.現在のところ,移入種が原因で在来種の個体数減少を引き起こしたと確認された例はない.移入種との交雑,餌資源や営巣場所をめぐる競争,伝染病など在来種への悪影響のおそれがある.外来種の輸入状況,移入先での生活史,個体群動態などの情報が絶対的に不足している.

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