日本鳥学会誌
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サシバ Butastur indicus の営巣環境の特性
小島 幸彦
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1999 年 48 巻 2 号 p. 151-155,165

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抄録

1977年から1980年にかけて大阪府河内長野市近郊の低山帯でサシバ Butastur indicus の営巣環境について調査した.52本の営巣木が確認され,その多くが山間の小川や水田の近くにあった.営巣木の平均標高は256m(n=52)であった.すべての営巣木は斜面(平均斜度33.3°,n=52)にあり,斜面の位置を下部,中腹,上部に区分した場合の営巣木の本数は,それぞれ23本,23本,6本であった(X2=11.12,df=2,P<0.005).斜面の方位に関しての選択性は認められなかった(北:15本,東:14本,南:11本,西:12本,X2=0.77,df=3,P<0,50).
営巣木の多くは林緑の木または森林から突出した木であった.樹種はアカマツ Pinus densiflora(26本),クロマツ P.thunbergii(11本),ゴヨウマツ P.parviflora(1本),スギ Cryptomeria japonica(9本),ヒノキ Chamaecyparis obtusa(4本),モミ Abies firma(1本)であった.営巣木の樹高(平均17.0m,n=48)と巣の地上高(平均11.5m,n=49)に相関性があり(r=0.763,P<0,0001,n=49),多くの巣は営巣木の樹高の約3分の2の高さに位置した.確認された53巣のうち,幹に接して枝上に造られた巣が41巣(77%),幹から1~3m離れた枝上の巣が9巣(17%),そして木の又の巣が3巣(6%)であった.繁殖期のサシバの主要な餌動物であるヘビやカエルが生息する水田などの湿地の存在が営巣地選択の重要な要因のひとつであると思われた.また巣への出入りが容易であることも営巣地選択に関連していると思われた.

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