抄録
キツツキ類の営巣木の特徴を明らかにするために,木を切り倒したりほとんど傷つけることなく,樹幹内部の硬さの変異を測定する方法を開発した.今同開発した方法の特徴は,生長錐(木材試料採取具)をねじ込むトルクを指標として,木材組織を変形させる力を測定する点にある.また,生長錐をねじ込む前に,ドリルで小径の穴をあけることで,生長錐のビットの外側だけで木材を変形させるようにした.木材の硬さと関係が強い密度を基準にして,生長錐のどの部分が木材を変形させるみかけの基点となるかを調べ,生長錐の最大径部分より1cm先端よりにみかけの測定点があることを明らかにした.ただし,生長錐最大径部分もねじ込みトルク発生に関係している可能性があるため,測定は最大径部分までねじ込んだところから開始した.したがって,トルクの測定データは,表面より1cm以上深いところから得られた.生長錐をねじ込むときのトルクと木材の密度の間には強い関係が認められ,測定したトルクによって木材の密度(つまり硬さ)の推定が可能なことを明らかにした.