日本鳥学会誌
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非繁殖期のオナガ Cyanopica cyana の群れの行動圏と群れサイズの地域間の比較
今西 貞夫
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2002 年 51 巻 1 号 p. 62-73

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抄録

非繁殖期のオナガの群れの行動圏と群れサイズを長野県の南部(伊那標高約800m)と東部(野辺山標高約1350m)の2地域で,それぞれ4非繁殖期(1977-1981年)と3非繁殖期(1981-1983年)の間連続して調査した.野辺山は伊那と比べて,冬期に棲息環境が厳しくなった.行動圏の面積は伊那の10群では約135ha,野辺山の5群では約288haであり,野辺山の方が約2倍広かった.両地域での各1群の各季節の行動範囲は,伊那ではほぼ重なっていたが,野辺山では冬期に拡大し,春期に縮小した.行動圏の面積の2地域での違いは,野辺山の方が冬期の気象条件が厳しくなり,餌の利用量が少なくなることが影響していると考えられた.両地域とも隣接群の行動圏は一部または多くの部分で重複していた.3年間の平均群れサイズは,伊那の10群では約29羽で,野辺山の5群では約16羽であった.伊那では群れサイズは年とともに減少していたが,野辺山では変わらなかった.両地域の各1群の群れサイズは,ともに秋に目立つ増減が見られ,その後は時々1~3羽の増加があったがゆっくり減少した.隣接群も含めた群れサイズの減少率は,伊那では33.5%,野辺山では31.4%であり,地域間で違いがなかった.棲息密度は伊那では9.6羽/km2,野辺山では4.2羽/km2であった.また,野辺山のような冬期環境条件が厳しくなるところでも,群れの定住性が示された.他の地域との比較から,これらの地域の生息環境の違いは非繁殖期の群れサイズ,群れサイズの変化には大きな影響を与えなかったが,行動圏の面積や生息密度に大きな影響を与えることが示唆された.

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