2011 年 23 巻 1 号 p. 43-52
日本家族社会学会全国家族調査委員会による過去3回の全国家族調査(NFRJ98, 03, 08)データを用いて家族の趨勢的変化について検討を行う.分析対象を夫婦関係に限定し,末子0-6歳時の女性(母親)の就業状況,夫の家事・育児の分担状況,ライフステージを通じての結婚満足度を比較したが,3つの時点間で大きな変動は観察されなかった.これら,夫婦と子(核家族)を内包する家族に関しては,安定的な構造が示されたのである.では,変動はどのような場所に生起しているのだろうか.それは初婚継続家族の外側,つまり非初婚継続家族の増加を意味する.近年の家族の変動とは,社会空間における非初婚継続家族の比率の増加とみなすことができる.非初婚継続家族の経験は,いくつかの指標において初婚継続家族に比して不利なものであることが示された.こうした格差の存在は,これらの家族への所属が自主的な選択によるものとは考えがたいことを示唆するものである.