2014 年 26 巻 1 号 p. 19-26
本稿では,東日本大震災の被災者親子を支援するために組織された,「神戸ぽけっとnet.」の活動の記録を通して,神戸に避難し,幼い子どもとの生活を始めた母親たちが個人として,あるいは家族として,どのような困難に直面し,どのような戦略をとっているか,さらに,地域の非営利組織がこうした避難者をどのように支えることができるのかを考察した.
その結果,彼らが,厳しい現実の構造的条件のなかで,子どもとの生活のために「地域」の支援を得ながらその条件を変えていく主体的な働きかけをしていることが,見えてきた.同時に,彼らの戦略を捉えるとき,家族の範囲の重層性や,「地域」を含めた重層性に目を向ける必要があることも示された.
さらに,被災地から遠く離れた地域において,災害以前から存在した非営利組織同士のネットワークが,同郷の母子たちをつなぎ,さらに彼らと新たな地域とをつなぐうえで重要な役割を果たしたことも明らかになった.