2014 年 26 巻 1 号 p. 7-12
本稿は,日本家族社会学会大会(2013年9月8日静岡大学)におけるシンポジウム「地域社会と家族戦略」の趣旨と概要を説明したうえで,その3つの報告と1つのコメントに基づく特集原稿4本の要点を整理し,そこからシンポジウムの初めの問題意識に対して,どのような回答が引き出せるかを提示するものである.
まず,津富氏による,働きたいものの働けない若者の地域の一般住民による就労支援の活動の報告,西森氏による,大震災後に福島から神戸に避難してきた母子たちを支援するNPOの活動の報告,山地氏による,被災地における救助・避難・復興・まちづくりの検証を踏まえて,家族戦略の重層性や,地域による支援の複雑なあり方を示す.そのうえで,神原氏による,「家族戦略」概念の有効性への疑問や,生活システム論的アプローチの可能性の提示に対して,「家族戦略」概念の限界と有効性を整理する.