抄録
近年,社会的養護をめぐる議論において,家族再統合への関心が高まりつつある.しかしながら,このトピックに関する議論は,これまでの家族社会学であまりなされてこなかった.本稿では,ある児童自立支援施設での質的調査の結果をもとに,家族再統合の諸相について議論する.まず,先行研究のレビューから,家庭復帰を目指す「家庭復帰前提型支援」,同居はせずとも「家族維持」を目指す「分離型支援」とに,家族再統合支援を整理する(II).つづいて,調査結果の分析を行う.そこでは,どちらの位相にも現実的な困難が存在すること,こうしたなか,家族再統合支援の第3の位相として,「距離化」と呼べる支援が行われていることが明らかになる(III, IV).最後に,家族再統合の内実の複雑性を議論することの重要性と,このトピックを家族社会学的に論究していくことの意義について論じる(V).