家族社会学研究
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特別寄稿
女子大学生へのアンケート調査から見る老親扶養意識の考察――アジア主要6都市における比較――
染谷 俶子
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キーワード: 老親, 世代間扶養, 社会保障
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2016 年 28 巻 1 号 p. 63-72

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抄録

欧米より経済発展の遅れたアジア諸国では,現在も親孝行意識が強く存在している.その背景には,家族主義,宗教の影響が強いこと,また社会保障制度の発展が遅れたことがある.しかし近年のアジア諸国の少子化は著しく,子世代が老親扶養を担うことに困難が生じている.
発展の続くアジア主要都市において,老親への生活支援,介護の役割を主に担ってきた女性に注目し,女子大学生の老親扶養意識,母親からの期待,また自分の老後に関し,2011~2012年度にアンケート調査を実施した.対象はソウル,クワラルンプール,香港,南京,シンガポール,東京の6都市の大学である.調査結果については,2014年9月に東京女子大学で開催された第24回日本家族社会学会大会の国際セッションで報告したが,本稿はこの調査結果と報告全体をまとめ,さらに考察を加えたものである.
調査から,1.大多数の母親たちは,息子より娘に老後支援の期待が強い.2.東京以外の大多数の女子大学生は,就職後毎月親へ仕送りを予定している.3.東京とソウル以外の女子大学生は,「どんなことをしても親を養う」という意識が強い.4.日本以外は,外国人家事援助者が高齢者介護の重要な役割を担い,シンガポールでは政策の一環とされている.5.またアジア諸国にも,社会的価値観に基づく福祉国家の類型が見られた.

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© 2016 日本家族社会学会
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