家族社会学研究
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家族内部における孤独感と個人化傾向
中年期夫婦に対する調査データから
井上 清美
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2001 年 12 巻 12-2 号 p. 237-246

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抄録

従来の家族社会学においては、家族の間の「愛情」や「感情的融合」が自明のものとされ、家族のなかの孤独感については実証的に研究されることがほとんどなかった。本稿は「家族のなかの孤独感」に注目し、その現状と要因を中年期夫婦に対する調査データを用いて明らかにするものである。さらに近年では家族内部における個人化傾向が高くなり、「個別化と統合」が夫婦関係研究の課題となっていることを受け、孤独感と個人化の関係性について考察を加えた。調査の結果、1) 夫と妻の孤独感には質的な差異があり、配偶者に対する孤独感は妻のほうが高かった。2) とくに配偶者に対する「不満足度」が孤独感に強い影響を及ぼしている。3) 行動次元の個人化傾向は孤独感に影響を及ぼす要因にはなっていなかったが、意識次元では個人化しつつ孤独感も高まっているという現状があることなどが明らかになった。

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