家族社会学研究
Online ISSN : 1883-9290
Print ISSN : 0916-328X
ISSN-L : 0916-328X
介護殺人・心中事件にみる家族介護の困難とジェンダー要因
介護者が夫・息子の事例から
羽根 文
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 18 巻 1 号 p. 27-39

詳細
抄録

急速な少子高齢化に伴い, 高齢者の介護問題がさまざまな角度から取り上げられているが, 介護殺人・心中事件は最も悲劇性の高い問題のうちのひとつであるとされている。この事件の大きな特徴として, 加害者である介護者の圧倒的多数が男性であることが挙げられる。そこで本稿では, 介護者が夫と息子の事件について事例分析し, 事件からみえてくる家族介護の困難と, そこに作用するジェンダー要因をもとに, なぜ男性が事件へ追い込まれやすいのか考察した。夫・息子の介護者とも互酬性の規範やジェンダー規範などにより, 強く介護を動機づけると同時に周りに相談できない状況に陥っており, また, 男性介護者というだけで周囲から高評価されることも, 彼らをより介護に打ち込ませる要因となっている。このような状況で介護を継続困難にする要因が発生すると, 介護意欲をそがれることで目的を失い, 殺人・心中に至るリスクが高まってしまうのである。

著者関連情報
© 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top