2015 年 56 巻 2 号 論文ID: jjom.H27-04
本総説では,枯死木内部における菌種間相互作用に影響する要因,さらに菌種間相互作用や菌類の種多様性が枯死木分解に与える影響についてまとめた.枯死木内部における菌種間相互作用のうち優占するのは競争関係である.菌種間での競争力の階層性が,枯死木内部の菌類群集の発達や分解に伴う菌類遷移を規定するメカニズムだと考えられている.菌種間競争の勝敗には,枯死木の樹種,温度,含水率,ガス環境,分解段階といった環境要因だけでなく,定着のタイミングや接種源の大きさといった菌類側の要因も影響する.過去の研究をまとめると,菌種間相互作用が枯死木分解に影響するメカニズムとしては,以下の3つが考えられた:(1)最も競争力の高い菌種の分解力に左右される;(2)競争に伴うエネルギーや養分のコストが菌類の生理活性を変化させ,分解力に影響する;(3)資源分割や,先行定着菌による促進効果により分解が促進される.