トランスジェンダー女性の処遇を巡る法的紛争から,職場のジェンダーと社会全体のルッキズムが見えてくる.経済産業省職員事件では,トランスジェンダー女性の女性用トイレの使用に反対していたのは男性上司たちだけであり,女性職員たちは原告のトランスジェンダー女性を応援していたのだが,女性職員たちの意見をよそに女性用トイレが制限され続けた.差別の原因は複合的で単純ではないが,依然として残る職場の男女差別によって,トランスジェンダー女性は,女性の劣位性をより濃縮にした形で背負わされている.社会に蔓延るルッキズムにも同じ構造が見て取れる.トランスジェンダー女性たちは,容姿が原因となって就職ができない等,ルッキズムが命や生活に直結する深刻な問題となっている.この世からルッキズムを完全に無くすことは困難であるが,一人一人が自分のルックスとの向き合い方を覚えて和解し,若い世代に伝えていく必要がある.