日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
医原性の眼窩下神経感覚障害と末梢性顔面神経麻痺に対して鍼治療が著効した1症例
山元 宏允野末 雅子野口 智康福田 謙一
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2023 年 15 巻 1 号 p. 37-43

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抄録

症例の概要:症例は73歳の女性で,主訴は左側上唇の痺れと顔面の運動麻痺であった.近医で上顎左側臼歯部に口腔インプラント2本埋入後,方向性の位置異常と上顎洞内インプラント迷入が認められたため口腔インプラント2本除去した.その直後より左側上唇の違和感・運動異常・鼻からの水漏れの症状を自覚した.上顎洞瘻孔に対しステロイドとクラリスロマイシンが処方され上顎洞粘膜閉鎖術が行われたが,症状は残遺した.その症状を改善するため,当科へ紹介来院した.左側眼窩下神経感覚障害,左側末梢性顔面神経麻痺と診断された.ビタミンB12製剤の処方,低出力レーザー光処理(low-level laser treatment:LLLT)の星状神経節近傍照射(stellate ganglion area irradiation:SGR),近赤外線照射にて治療を行うも特に顕著な効果が認められなかったため,鍼治療を施術した.顔面神経麻痺は柳原法で24から40点に回復し,感覚神経障害も静的触覚閾値検査(Semmes Weinstein Monofilament Test:SWテスト)で患側1.0gから0.008gと,明らかな改善が確認された.患者は,感覚も運動も明らかな回復を自覚し,満足を得た.
考察:末梢性の運動神経麻痺や感覚障害に対する治療法は,光線療法,星状神経節ブロック,ステロイド薬,ビタミン製剤などが主に行われているが,鍼治療も治療の選択肢のひとつになりうると考えられた.
結論:鍼治療は,末梢性神経損傷の回復に有効であると考えられた.

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© 2023 日本口腔顔面痛学会
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