目的:三叉神経の神経障害性疼痛に対する少量の塩酸ケタミンの効果を安静時痛の鎮痛効果と随伴症状の変化について検討した.
方法:三叉神経領域の各種神経障害性疼痛を有する7名を対象とした.塩酸ケタミン10mgとミダゾラムの併用と生食とミダゾラムの静脈内投与による二重盲検,クロスオーバー試験とした.各薬剤は5試験日反復投与した.安静時疼痛の強度(VAS),アロディニア,ディセステジアの領域,電流認識閾値(EDT)について検討した.
結果:薬剤の投与後,ケタミン,生食の両群でVASは明らかに低下し,ケタミン群では生食群よりもさらに顕著に低下した.しかし,長時間作用性あるいは累積した鎮痛効果は見られなかった.EDTは経時的に有意差が認められた.ケタミンの反復投与では,知覚低下には軽快が見られないものの,ディセステジアの軽快をみた患者もいた.一方,有害事象は皆無だった.
結論:ケタミンは,三叉神経の神経障害性疼痛に対して一時的な鎮痛効果と傷害部位からの非侵害性入力の抑制を有したが,これらの効果は長時間作用性や累積するものではなかった.