日本口腔顔面痛学会雑誌
Online ISSN : 1882-9333
Print ISSN : 1883-308X
ISSN-L : 1883-308X
症例報告
口腔顔面領域の筋・筋膜性痛,神経血管性痛,神経障害性痛の併存が疑われた一例
鳥巣 哲朗多田 浩晃
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 9 巻 1 号 p. 67-73

詳細
抄録

症例の概要:症例は67歳女性.2年前の交通事故以来,頭痛と不快感(頭重感,右頚部痛,右肩こり)が持続.5か月前から上顎右側臼歯部に原因不明の疼痛が生じ,その後1か月前の航空機搭乗をきっかけに右後頭部痛が発現.かかりつけ歯科医にて咬合治療,スプリント療法,上下歯列接触習癖に対する改善指導等を受けたが症状が軽減せず本院補綴科受診となった.口腔内所見およびパノラマX線撮影では異常所見は見つからなかったが右咬筋の圧痛(硬結帯)と右後頭部および右側上顎臼歯部への関連痛が認められた.病態説明とセルフケアおよび生活指導を主体とした初期対応で臼歯部の疼痛は消退し後頭部痛は減少した.その後,歯科麻酔科および医科総合診療科にて五苓散とトリプタン系片頭痛頓挫薬で対応し疼痛はさらに減少した.神経障害性痛様の症状が残存したため,少量のプレガバリン処方を追加したところ疼痛はほぼ消退した.
考察:筋・筋膜性痛およびそれに伴う関連痛,神経血管性痛,神経障害性痛がオーバーラップした症例と考えられた.各因子に対して適切なアプローチを行うことで複雑な症例の疼痛管理が可能になったと考えられる.本症例では各因子に対して主にセルフケアと生活指導,五苓散,および低服用量のプレガバリンが有効であったと考えられた.
結論:複数の要因が関連する複雑な疼痛において,関連する各要因に対し適切な対応をとることで良好な疼痛管理が可能となった症例を経験した.

著者関連情報
© 2016 日本口腔顔面痛学会
前の記事 次の記事
feedback
Top