2022 年 16 巻 1 号 p. 1-11
病気や障害を経験した人々にとって参加や適応がどのようなことかは,作業療法や作業科学において長い間,探求されてきました.参加は,2001年に世界保健機構(WHO)が国際生活機能分類を発表して以来,作業療法を含む保健医療福祉分野において健康や幸福の概念と結びつけ広く用いられるようになりました.作業療法の創設に関わった Meyer(1922)は,多くの病気は適応の問題であると指摘し,作業が生活の問題への適応に多大に貢献することを提示しました.私は16歳,高校 1 年生の時に体操の事故により頸髄損傷を受傷し障害をもちました.受傷後,約半年間の入院を経て,高校への復学も果たしましたが,受傷前とは大きくかけ離れた経験をしました.本稿では,私自身の経験をオートエスノグラフィーの手法を用いて振り返り,作業と参加,適応についての考察を提示しました.