薬剤疫学
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「ファーマコビジランスのあり方-新しい時代の要求に応えるには-」
4. ファーマコビジランスに携わる医師の絶対的不足: その現状, 原因分析と対策
池田 正行
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2008 年 13 巻 1 号 p. 55-62

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抄録

わが国では、独立行政法人医薬品医療機器総合機構 (PMDA) と厚生労働省が、公的機関として連携してファーマコビジランスを行なうと謳われている。FDAのCDER (Center for Drug Evaluation and Research) / CBER (Center for Biologics Evaluation and Research) だけでも、三百数十人の医師がいるのに、日本のFDAといわれるPMDA全体でも、20名前後の医師しか確保されていない。社会的な評価が低い、診療職よりも収入が低いことを含め、複数の要因により医師不足が生じている。多くの品目で審査を担当すべき適切な専門医を欠く結果、小児循環器科医が過活動性膀胱治療薬の審査をせざるを得ないといった専門外審査が常態化している。医師の診療行為が刑事訴追を受け、厚労省の官僚が行政判断に対し個人的責任を問われ有罪が確定する時代に、このような専門外の活動を強いられている審査員の危機感は非常に強い。規制当局や製薬企業に対し、未承認薬の早期承認や市販後安全性管理を厳しく要求しながら、それを支える人材を全く育成しようとしない医師達の中から、PMDAを志望する医師を育てていくためには、単に募集枠を広げる以上の改革が是非とも必要である。第一に、兼業規制の緩和、サービス残業の抑制、前時代的な成果主義の撤廃といった労働環境の改善。 第二に審査免責制度の確立と法務部門の設立。第三に市販後安全性部門への臨床医の配置である。より開かれたPMDAにより、PMDAの外にいる人々がPMDAにもっと貢献できるようになることが、ファーマコビジランスに対するメディアと一般市民への深い理解につながる。

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© 2008 日本薬剤疫学会
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