薬剤疫学
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SGLT-2阻害薬の重要な潜在的リスクに関する評価:レセプトデータベースを用いたコホート研究
前川 拓也北出 貴章原 梓漆原 尚巳
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論文ID: 31.e1

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抄録

目的:SGLT–2阻害薬(SGLT–2i)の医薬品リスク管理計画に示された重要な潜在的リスクを臨床実態下にて評価した.

研究デザイン:大規模レセプト特定健診データベースを用いた,SGLT–2iとDPP–4阻害薬(DPP–4i)の単独処方患者をそれぞれ曝露群,対照群とする後ろ向きコホート研究.

方法:DeSCヘルスケア株式会社から提供を受けたレセプト・特定健診データベースにて,2014年4月から2021年8月に2型糖尿病(T2DM)の傷病コードを有し,かつSGLT–2iまたはDPP–4iを単独処方された患者を対象集団とした.傾向スコアマッチング(PSM)および逆確率重み付け(IPTW)により投与群間の比較妥当性を確保した.アウトカムを肝障害,悪性腫瘍,骨折,心血管系疾患,急性膵炎,急性腎障害,下肢切断の診断コードより特定しイベント発生とした.Cox比例ハザードモデルにてハザード比(HR)を推定し,5通りのバイアス分析を実施した.

結果:PSM対象集団では,DPP–4i群に対するSGLT–2i群のHR(95%信頼区間[CI])は,急性腎障害0.63(0.28–1.44),骨折0.75(0.58–0.95),肝障害0.85(0.67–1.07),心血管系疾患0.87(0.71–1.05),悪性腫瘍1.15(0.88–1.51)および急性膵炎1.51(0.71–3.19)であり,下肢切断の発生は認めなかった.IPTW対象集団では,DPP–4i群に対するSGLT–2i群のHR(95%CI)は, 急性腎障害0.72(0.47–1.10),骨折0.76(0.67–0.86),肝障害0.91(0.80–1.02),心血管系疾患0.86(0.78–0.94),悪性腫瘍1.04(0.92–1.18),急性膵炎1.81(1.24–2.64)および下肢切断2.89(0.69–12.1)であった.悪性腫瘍全般の発生リスクについては,PSMおよびIPTW集団のいずれも有意な結果を示さなかったが,臓器別解析の一部ではIPTW集団で有意な結果が認められた.バイアス分析でのみ,急性腎障害および肝障害のHRの有意な減少,下肢切断のHRの有意な増加が認められた.

結論:DPP–4iの使用と比較し,SGLT–2iの使用は,重要な潜在的リスクである悪性腫瘍全般でのリスク増加を示さなかったものの,一部臓器別に有意なリスク増加または減少がみられた結果は,骨折,心血管系疾患のリスク減少,急性膵炎のリスク増加を示唆する結果とともに,最適化された研究デザインによる検証が必要である.

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