体育学研究
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小学生スプリンターにおける短距離走の適正距離の検討
加藤 謙一佐藤 里枝内原 登志子杉田 正明小林 寛道岡野 進
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2002 年 47 巻 3 号 p. 231-241

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抄録

本研究の目的は,全国大会および栃木県大会に出場した小学5・6年生男女の100mレース中の速度変化を明らかにすることによって,小学生スプリンターにおける適切な短距離走の疾走距離を検討することであった.その結果は以下のように要約できる.1)100mまでの10mごとの各区間における疾走速度は,すべてにおいて全国の方が栃木よりも有意に高い値であった.2)全国と栃木は速度に違いがあるものの,各学年男女ともにスタートから30mまでが加速疾走局面であり,20-30m区間の最高速度に対する相対速度は94.8-97.1%であった.3)全速疾走局面は,全国では30-60m,栃木では30-50mであり,全国の方が栃木よりも10m疾走距離が長かった.4)全速維持局面は,全国では60-100m,栃木では50-100mであり,栃木の方が全国よりも10m疾走距離が長かった.一流スプリンターの100mタイム(997-11.22秒)に相当する距離は,全国では男女5年生と女子6年生が約70m,男子6年生が約80mであり,栃木では男女5年生が約60m,男女6年生が約70mであった.また,一流スプリンターの90-100m区間の相対速度(約95%)に相当する区間は,全国では男女各学年とも70-80m区間であり,相対速度が94.8-95.7%であった.一方,栃木では男女各学年とも50-60m区間においてすでに相対速度が92.7-93.8%の低い値であった.本研究の結果から,小学生のスプリンターにとって,身体的な負担を軽減し,しかも短距離種目の特性を損なわない短距離走の疾走距離は,全国大会レベルでは80m,県大会レベルでは60mであると考えられた.

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© 2002 一般社団法人 日本体育学会
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