体育学研究
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原著論文
若年女性における長時間一定負荷運動時の体温調節反応 : 基礎体温の高低差及び性周期からの検討
松崎 愛蝶間林 利男木村 昌彦
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2006 年 51 巻 5 号 p. 611-621

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抄録

本研究は, 若年女性における性周期ならびに基礎体温の高低差が, 常温環境下での長時間一定負荷運動時体温調節反応に及ぼす影響を検討した.
正常な性周期である健康な女性8名に対し, 事前に3ヶ月間の基礎体温 (BBT) を測定し, そこから推定した各被験者の低温相 (L ; 6-14日) と高温相 (H ; 18-30日) に, 室温25℃, 湿度50%一定環境に保たれた人工気候室で60%Vo2maxの自転車運動を60分間負荷し, 夫々3周期間行った. 尚, 実験日が高温相であることの妥当性を尾上らの「排卵日推定法」で調べ, 10日以上の高温相での実験群 (I群), 10日未満の高温相での実験群 (II群), 及び高温相のない実験群 (III群) に分類した.
I群のBBTは (L) 36.13±0.05℃, (H) 36.59±0.19℃で (H) が有意に高値を示し (p<0.001), Treは安静時から60分間の運動中終始 (H) が (L) よりも明らかに高値で推移した. II群は, BBTが (L) 36.17±0.04℃, (H) 36.53±0.16℃で (H) が有意に高い値を示し (p<0.05), Treは安静時の間は明らかに (H) が高い値を示したが, その後差はなくなった. III群のBBTは (L) 36.14±0.10℃, (H) 36.23±0.04℃で, Treにおいても終始差は認められなかった. 以上の結果, 基礎体温が高温相で明らかに高い値を示すIとII群は, 高温相の深部体温は運動開始から低温相よりも高い値で推移するが, 運動終盤ではその差が消失する. 定常状態に至る温度閾値は変動しないが, 定常状態に至るまでの時間は基礎体温の高低差に左右されることは明らかであり, 定常状態に至るまでの変化を捉えるために発汗が開始した深部体温閾値を両相で比較することが必要であった. 一方, 基礎体温に高低差を認めないIII群は, 体温上昇に性周期の影響を認めなかった. すなわち, 運動時の体温調節反応への性周期の影響は, 高温相の長さに影響されず, 基礎体温及び運動開始時の深部体温の高低差に修飾されることが示唆された.

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© 2006 一般社団法人 日本体育学会
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