日本小児血液学会雑誌
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13-cis-レチノイン酸投与を試みた若年型慢性骨髄性白血病の1例
高村 まゆみ麦島 秀雄永田 俊人七野 浩之島田 俊明鈴木 孝陳 基明原田 研介
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1996 年 10 巻 3 号 p. 216-220

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抄録

1歳男児, 生後3カ月に若年型慢性骨髄性白血病 (JCML) と診断され, 6 mercaptopurineの内服開始にてWBCの減少が一時的にみられたが, その後増加し, 貧血, 血小板減少も著明となり, 感染症と多彩な皮疹の消褪を繰り返した.生後11カ月の骨髄検査で染色体異常 (46, XY, 21q+) もみられるようになったため, 13-cis-RA (160mg/m2/日) の連日経口投与を生後12カ月目より開始した.投与開始時のWBC数は34,300/μlで, 21日目には8,900/μlと減少し, 幼若な顆粒球系細胞が消失し成熟顆粒球細胞の出現がみられ, 単球も1.0%に減少し, 肝脾腫の消褪傾向がみられた.一時的に13-cis-RAの効果がみられたが, 副作用のため投与を中止したところ血液所見および臨床症状は増悪し, その後は反応が得られず大量6 mercaptopurineribosideとcytosine arabinosideの持続点滴投与を行った.WBCの減少と肝脾腫の縮小がみられ, 13-cis-RAの内服も併用したが効果は得られなかった.自験例のように染色体異常がみられたJ-CMLに対しても13-cis-RAは一時的に効果がみられたが, 本剤は同種骨髄移植を前提に早期から投与する薬剤と思われた.

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